柔道整復師とは
柔道整復の基本概念の成立
有史以前の日本民族の伝統と精神は、太古の時代より「武」を中核精神として形成されたといわれ、この「武」を中心とする精神は、それ以降の歴史の中にも伝統として引き継がれたといわれています。
一方、この「武道」とともに、「文」の道すなわち信仰、宗教、科学もその時代に応じて追求され、発展してきました。
戦国時代の武道の書物には「殺法」、「活法」に関する記述がありますが、殺法は武技そのもので、柔術でいえば、当身技、投技、絞技、関節技、固技はすべて殺法に属します。活法は、傷ついたものの治療法、手当てでもあり、骨折、脱臼、打撲、捻挫などの外傷を治すもので、出血、仮死者の対する蘇生法なども含まれています。
この殺法と活法は、「文武」の道として表裏一体となって進歩発展し、殺法は武術の殺戮手段として用いられてきましたが、時代の変遷とともに、その一部は保健と精神修養の手段として、その技を競技や運動として楽しむスポーツの中に組み入れられながら現在行われています。一方、活法は医療の一部として柔道整復術へとそれぞれ発展して今日にいたっています。
柔道整復師と柔道
現在の柔道整復術は、明治の医制改革による近代医学の発展の成果とともに、わが国古来の武道とくに柔術のうえにたった江戸時代の接骨の輝かしい伝統が基礎となっていることが特徴です。このことは、「武道」の伝統と精神とともに、柔道整復術の大きなバックボーンであると認識されています。
柔道整復師における柔道との関係は、入学条件としての柔道の素質、在学中、基礎科目の中で体育に柔道を含むことになっています。
- 伝統の柔術、東洋医学の技法を多く取り入れた接骨術は、大正9年(1920)年の柔道整復術が公認された際の資格では、「柔道の教授のなすもの」が打撲、捻挫、脱臼、骨折に対して柔道整復術を行えるとなっていました。
- 柔道整復師の手技は、柔道の技、構え方などの体技に影響されることが多く、このように、古来からの伝統が柔道、柔術の持ち味を十分に生かし、発展してきました。
- 武道としての柔道、柔術は、日本人の伝統的精神要素の一つとして存在し、武道精神の「道」「禅」「行」は今後も社会において必要要素であると考えられます。
- 柔道整復術の手技および精神的要素は、柔術の基本である武道の武道の「活法」を基本として、これに東洋、西洋の医学技術が加わったものであります。 当身術、投技、関節技などの技を練習する中で体の取り扱い、武道的心構えに習熟し、併せて、負傷した靭帯の治療を行い、傷ついたものの早期社会復帰を図ることに、柔道整復術の特異性を見ることができます。
柔道整復術の現代的意義・施術目的
施術目的は、患者の肉体的な苦痛を一刻も早く取り去り、患部の回復を図り、早期に社会復帰させることにあります。このためには、適切な施術、治療に努力するのは当然ですが、医師と同様に、患者からの信頼と尊敬を得るような人間性の向上と高度の医学的知識の習得が必要です。今後も、現代医学の成果を十分にとりいれ、時代に遅れないように常に研究し、施術面でも医学的・科学的解明を十分に図りながら進めていくよう努めてまいります。
業務範囲と柔道整復術
柔道整復術とは「運動器に加わる急性、亜急性の原因によって発生する各種の損傷に対する施術」であり、骨、筋、関節を主体とする運動器に各種の外力または自家筋力により生じた骨折、脱臼、捻挫、打撲や軟部組織損傷の「患部」あるいは「受傷部」に「施術」するものです。この場合の損傷とは外力または自家筋力による機械的損傷であり、また施術とは柔道整復術を施すことであります。
業務範囲と施術限界
柔道整復師の施術はすべての外傷に万能ではありません。業務の範囲を認識し、限界を厳格に見極めなければなりません。施術適応の限界を軽視したがゆえに患者に重大な障害を残し健康を損ね、生涯に不幸を招くようなことは絶対にあってはなりません。 損傷を見極める手段の一つとしてX線撮影があります。これは「医師、歯科医師、診療放射線技師でなければ、放射線を人体に照射してはならない」さらに「診療放射線技師は、医師または歯科医師の具体的な指示を受けなければ放射線を人体に照射してはならない」と規定されています。
柔道整復師倫理綱領
国民医療の一端として柔道整復師は、国民大衆に広く受け入れられ、民族医学として伝承してきましたが、さらに継承発展するために、倫理綱領が定められています。ここに柔道整復師は、その名誉を重んじ、倫理綱領の崇高な理念と、目的達成に全力を傾注することを誓っています。
- 柔道整復師の職務に誇りと責任を持ち、仁慈の心を以って人類への奉仕に生涯を貫く。
- 日本古来の柔道精神を涵養し、国民の規範となるべく人格の陶冶に努める。
- 相互に尊敬と協力に努め、分をわきまえ法を守り、業務を遂行する。
- 学問を尊重し技術の向上に努めると共に、患者に対しての常に真摯な態度と誠意をもって接する。
- 業務上知りえた秘密を厳守すると共に、人種、信条、性別、社会的地位などにかかわらず患者の回復に全力を尽くす。
